『Navras』Juno Reactor vs Don Davis【歌詞解説つき】

今回は映画『マトリックス』より、壮大な3部作のエンディングを飾った楽曲『Navras』のご紹介です。
ナヴラスは映画史にのこる名曲として有名ですが、ただかっこいいからだけではありません。
実はとてもおもしろい秘密が隠されてたのです──




Juno Reactor "vs" Don Davis


まずはこの曲の面白いところを見ていきましょう。

マトリックス音楽はジュノ・リアクター(テクノサウンド担当)とドン・デイヴィス(オーケストラサウンド担当)の二人がメインです。
映画マトリックスにおいて、二人は絶妙な混成で独自のサイバネティックオーケストラを構築しました。
以上のことから、サウンドトラックのアーティスト名はすべて「Juno Reactor and Don Davis」と記載されているのですが…
実は、この曲『ナヴラス』だけは「Juno Reactor vs Don Davis」になっています。
そう、「同調」ではなく「競演」なのです。
アナログとデジタルの対峙。
明らかな相対を浮き彫りにしつつ、それでも見事に絡み合うさまは、互いを悪しからず思っていても運命的に相容れない「ライバルとの対決」を想わせます。

さらにはサンスクリット語のコーラス(古代インドの宗教文書ヴェーダにあるシャンティ・マントラ(平和の真言)の言葉をそのまま起用)が妖しくも荘厳に演出──
最終決戦を飾るにふさわしい一曲です。
ちなみにサンスクリットと真言は万物の根源の音とされ、不思議なほどよく耳になじむ性質をもっています。




ナヴラスとは?


ナヴラスはサンスクリット(古代インドの言語)で「九つの感情」「九つの味」の意味。
すなわち「恋情」「滑稽」「哀感」「憤怒」「気力」「恐怖」「嫌悪」「驚愕」「寂静」を指します。
インドでは芸術や舞踊の表現技法に用いられる概念で、ナヴァラサと呼ばれるのが一般的。
踊っている途中でいきなりヤバい笑顔になったりするアレですね。
もっと詳しく知りたい方はヒンズー(ヒンディー)教関連、「ナヴァラサ」などで調べてみてください。

これが楽曲とどう関係しているか?
よく聴くと曲調がちゃんと9セクションに分かれているんです。

これらをふまえて聴けばNavrasがいかに練りこまれた曲であるかを実感できることでしょう。




Navras
アーティスト/Juno Reactor vs Don Davis
アルバム/Matrix Revolutions Music From The Motion Pictures



冒頭にもあるとおり、歌詞はシャンティ・マントラ(平和の真言)をサンスクリットで歌い上げています。

歌詞は……
アサトーマ サッド ガマヤ
タマソーマ ジョーティル ガマヤ
ムルィッティヨールマー アムルィタム ガマヤ

意味は……
非真より 真実へ
暗闇から 光明へと
死を超えて 不滅へと わたしたちをお導きください

…となっています。
この真言の注目点は「自分だけでなく人類すべてに平和を」という、寛容と祈りのメッセージ。どうりでナヴラスの壮大な曲調に映えるわけですね。




Navras
アーティスト: Juno Reactor vs. Don Davis












マトリックスつながりでもう1曲ご紹介しましょう。

出典はマトリックスのスピンオフ作品として制作されたアニメ『アニマトリックス』。
外伝的エピソードや、マトリックスの原点である人類と機械の最終戦争など、9話構成のオムニバスストーリーです。

そのOSTの中でも特に強烈な楽曲がOverseerの『Supermoves -Animatrix Remix-』。
オリジナル版はいくぶん呼吸する余裕があるのですが、リミックス版は最初から全開状態。
一瞬たりとも止まることを許さない死の突撃。血も涙もないテクノサウンドとバンドサウンドの応酬──
いやがおうにもアドレナリンの爆発を体感できることでしょう。
マトリックス・マニアだけが知る隠れた名曲です。

Super Moves -Animatrix Remix-
アーティスト/Overseer
アルバム/アニマトリックス



…ちょっと余計なことを言うと、Supermovesは『マトリックス・リローデッド』の予告でも使用されたのですが、もともとアニマトリックス用に制作された楽曲のため、リローデッド本編にもOSTにも収録されず、ファンを路頭に迷わせたという黒歴史がありますw





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